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| 樹冠の移動者−猿類
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ボゥ、ボゥ、ボゥ、垂れ下がった鼻を揺らし威嚇する。 太鼓腹を突き出して、仲間の安全を見守っている。 |
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<<ボルネオ>>
ボルネオ島で最初に出会ったのはテングザルだった。
茶色い川をボートで1時間ほどたった頃だったろうか。ボートがふと岸に寄る。テングザルの群れだ。メスや子供はいっせいにジャングルの奥へと姿を隠す。手前には大きな鼻と太鼓腹のオスが何頭かこちらを見下ろし、吠え始めた。ボゥ、ボゥ、ボゥ。1頭が鳴くと、別の1頭が、そしてまた別の1頭が私たちに向かって吠え続ける。奥ではバサッ、バサッとメスたちが移動する音が聞こえてくる。オスたちも奥の気配を気にしながら、私たちへも更に威嚇し続ける。堂々としたオスたちの姿は、威厳に満ちている。その後も何回もテングザルに出会ったが、最初に出会ったオスたちがいちばん立派だった。
テングザルは水辺近くのジャングルに住み、泳ぎも得意だ。指と指の間には水かきまである。時には川を泳いで渡ることがあるらしい。ボルネオのサバ州では主に川沿いで見ることができるが、サラワク州にあるバコ国立公園では海沿いのマングローブに生息している。引き潮のときには、徐々にマングローブの気根が、干潟にカニやムツゴロウの姿をあらわす。そんなときにテングザルもひょっこりと姿を見せてくれることがある。時には干潟を歩いていることもあった。
テングザルは大抵、高い木の上にいる。彼らの好む若葉が多いためでもある。だが、彼らは人間の姿を見つけると、どんなに遠くからでも一目散に逃げてしまう。そんなときによく見られるのが、テングザルの豪快なジャンプだ。移る木を見定め、数回反動をつけ、大きく両手を伸ばしてジャンプする。樹上を群れで生活する動物の多くは、誰かがジャンプしたところを他の仲間が通っていく。そこは充分にジャンプできる距離で、枝も折れたりしていない、安全な通り道と判断されるのだろう。
私たちも1頭が通ったところを凝視する。何頭かは、続いてジャンプしていくが、時にはなかなかジャンプしないで座り込む者もいる。まだ若い個体で恐いのだろうか、それとも気分が少し落ち着いてきたのだろうか。そこで葉を食べ出したり、後戻りを繰り返すこともある。すると別のところでバサッと音がする。大きな群れの場合は通り道はいくつもできてくる。躊躇していた個体も、気分が変わったのか勢い良くジャンプして、群れは徐々にジャングルの奥へと消えていく。
何回か檻の中にいるテングザルを見たことがある。現地の人が飼っているそうだ。ある場所では、川の真ん中にある岩のところで見つけて捕まえたという。”テングザルは泳げるのに、何故かこの1頭だけが、取り残されていた。今まではパンやバナナを与えても直ぐに死んでしまったのに、こいつは平気みたいだよ。本当に変わった奴だ”と話してくれた。種類によっては食料になったり、売ることが目的で動物を捕獲することがあるようだ。テングザルに関しては、どちらもノーと言っていた。事の真意は未だに不明だ。
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